タイム
タイムはシソ科の多年草で、原産地は地中海沿岸。主な産地はフランス、スペイン、ポルトガル、ギリシアなど、亜熱帯から温帯にかけて生育しています。
かすかな苦味と清々しい香りのする、心地よさの感じられるハーブです。
ヨーロッパでは昔から「タイムの香りがする」といわれることは最高の褒めことばだったそう。それはタイムが小さくても気品のある香りを漂わせていることから、勇気の象徴、気品や優雅さを表すハーブとして人々に信じられていたからです。そのため当時は戦争に行く兵士がタイムの小枝を身につけたり、女性がタイムの柄の刺繍をほどこしたものを兵士にプレゼントしていたといわれています。
ひとくちにタイムといっても、その品種は多種多様、用途も料理から観賞用まで様々です。
料理に使用されるものでポピュラーなのは、さわやかな芳香が強く、フランスやイギリスで有名なガーデンタイム、また主にスパイスとして使用されるものには、すがすがしい中にほろ苦さと甘味が感じられるコモンタイムなどが挙げられます。
他にもレモンタイム、コンチネンタルワイルドタイム、クリーピングタイムなど、約30種にものぼる種類のタイムがあります。
タイムにはフェノールやチモールといった殺菌・防腐作用のある成分が含まれており、ソーセージやハムなどの加工に適しています。また肉や魚と相性がよく、肉料理や魚料理の他、ホイルの包み焼きやシチュー、トマト煮やマリネなどにもピッタリ。
長時間煮込んでも香りが残るため、だしをとる時に使うブーケガルニやブイヨンの材料には欠かせません。また食用はもちろん、入浴剤やポプリなど香料や観賞用としても人気があり、幅広く愛されているスパイスなのです。
パセリ
パセリはセリ科の二年草で、別名をオランダゼリといい、あざやかな緑色とさわやかな苦みのある香りが特徴のハーブです。原産地は地中海沿岸ですが、環境に適応しやすい性質であるため今では世界各地で栽培されています。
パセリには大きく分けて4つの種類があります。まず1つ目、葉が縮れた日本でおなじみのパセリがパナマウント種のモスカールドパセリ(カーリーパセリとも呼ばれる)です。葉の部分を料理に添えて、彩りを演出するのによく使われます。2つ目はイタリアンパセリ(フレンチパセリとも呼ばれます)。これは葉がまっすぐで平たく、その分食感もモスカールドパセリと異なります。この他に大きな葉柄の部分を食べるナポリタンパセリ、ニンジンのように根の部分を食べるハンブルグパセリがあります。
パセリは栄養価が高く、ビタミン、ミネラルや鉄分が豊富に含まれます。特にビタミンAはにんじんと同等の量で、ビタミンCはレモンの2倍!またパセリ特有の苦味成分であるアピオールには臭みを消す効果があるので、肉や魚の臭み消しや口臭予防にも利用されます。
料理に使われる場合は、やはりキレイな緑色を活かしてサラダやパスタ、ソテーなど様々な料理の飾りに使うことが多いでしょう。もちろん見た目を彩るだけでなく、塩と相性がいいため塩味の料理にもよく利用されます。
特にヨーロッパではパセリのみじん切りを塩・こしょうと同じ感覚で日常的に使用しているそうです。また、パセリは味や香りに干渉せず素材や他のスパイスの良さを引き立てる効果があるため、料理の最後にみじん切りにしてふりかけたりしても使われます。
ローズマリー
ローズマリーの香りには個性的な清涼感があり、どこか抹茶の香りにもが近い所があります。主にイタリアなどヨーロッパで日常的に広く使われ、殺菌効果や消臭効果があるため肉や魚料理で臭み消しとしてよく利用されます。素材にローズマリーをまぶすと、鮮度が保たれ腐れにくくなるため、老化防止に効く若返りのハーブの名称でも親しまれています。またポリフェノールを多く含み、活性酸素の除去や抗酸化力に優れていることでも有名。様々な効能を持っているのです。
薬理的な使用方法だけでなく、もちろん香り付けとしても優秀です。
特にお勧めなのは鶏肉やラム、子羊のローストやグリル料理です。ラムなどの癖のある肉はいいのですが、鶏肉や魚など淡白な素材は、程よくすっきりとした風味になるよう控えめに使用するといいでしょう。
バジル
トマトと相性がよく、イタリア料理によく使用されることで有名なバジル。みずみずしくさわやかな香りと色鮮やかな緑色が特徴で、ハーブやデコレーションとして様々な料理に利用されます。
原産地は熱帯アジアやインドで、シソ科メボウキ属の一年草です。日本ではバジリコとも呼ばれ、和名ではメボウキという名がつけられています。
どんな環境にも適応できることから、現在はなんと世界中で40種類ものバジルが栽培されているそうです。
火を通さず生の葉をそのまま使用する場合は、指で適度な大きさにちぎって料理にまぶしたり、細かく刻んでマリネやパスタにあえたりします。また、イタリアで有名なジェノヴェーゼ・ソースでも使用されています。
また、火を通す場合はトマトの煮込み料理に加えたり、ペースト状にして下味として牛肉に塗ったりします。こうすると肉からにじみ出す脂肪分とよく溶け合い、旨みがアップするのだといいます。
店先に並ぶ際には、乾燥させた葉やパウダー状にしたものも販売されており、様々な用途で活躍しています。
カレーにさっぱりとした風味を加えたい時には、クローブ・カルダモン・クミンなどのスパイスと組み合わせると相性がよいでしょう。スパイスとしての馴染みはあまりないかもしれませんが、タイのグリーンカレーなどにはよく利用されているようです。
ペッパー
日本ではコショウ(胡椒)としてお馴染みのペッパーは、下味をつけたり味を調えたり、どんな料理でも大活躍する調味料。最も身近なスパイスのひとつではないでしょうか。もちろん、カレーを作る時にも使われることがあります。
ペッパーはコショウ目コショウ科のつる科の植物。ブドウのように房状になった果実部分をスパイスとして使用します。原産地はインドで、主にアジアの熱帯地方で育成されています。
ペッパーの種類にはブラックペッパー、ホワイトペッパーのほかピンクペッパー、グリーンペッパーなるものもありますが、カレーによく使われるのはブラックペッパーとホワイトペッパー。この2つは同じ果実を加工して作られるのですが、どの時期に収穫するか、収穫後の後処理をどうするかによって異なる色や風味に仕上がるのです。
ブラックペッパーは、実が青く未熟な状態で収穫し、山積みにして発酵させ、天日干しにして色が黒くなるまで乾燥させます。皮の部分に香り成分がふくまれていて、風味も強いのが特徴です。牛肉など肉料理との相性がいいですね。
またホワイトペッパーは果実が黄緑色になり、完熟してまばらに赤みを帯びてきた頃に摘み取ります。袋に入れた果実を数日間水に浸し、やわらかくなった皮をむいて天日干しにします。こちらはブラックペッパーよりもマイルドで上品な香りがするため、魚料理によく合います。
カレーのスパイスに使う時は、ピリッと強い刺激が欲しい場合はブラックペッパー、反対に味をまろやかに調えたい場合などはホワイトペッパーを、それぞれ使い分けてみてください。
アニス
スパイスは様々な用途、効能がありますが、今回紹介するアニスもそんなスパイスのひとつです。
原産地は地中海東部の地域やエジプト。セリ科の一年草で、茎の部分はセロリと食感が似ているため、野菜として食用にもされています。スパイスに使用するのは鼻をつくような芳しい香りがする種子の部分。甘草に似た香りがするのが特徴です。
アニスをカレーに入れるとカレーのしつこさがなくなり、さっぱりとした甘みが加わります。しかし入れ過ぎると甘みが強くなってしまうので注意が必要。
このような香りの特性を活かし、アニスはケーキやドーナツの菓子作りには欠かせない存在となっています。また口の臭いを消す消化剤として使用されている他、古代エジプトでは王様の死体をミイラにするための防腐剤として使われていたというエピソードも残っているのですから驚きです。
元々アニスは古代ギリシア時代には薬草として人々に扱われていました。母乳の分泌を促進する、てんかんを予防する、くしゃみがとまるなど、アニスにまつわる効能には様々な説があったようです。それだけ刺激的で強い香りを持つ、インパクトのあるスパイスだったのですね。
ガーリック
ガーリックといえば日本でもおなじみの薬味、にんにくのことです。原産地は中央アジア、日本では青森県が主な生産地で、現在は国内シェアの約70%を占めています。
ガーリックは紀元前からエジプトやインド、ローマ、中国などで使用されていました。戦乱の絶えなかった時代、滋養強壮効果のあるガーリックはスタミナ源として将軍や兵士たちに重宝されたというエピソードが世界各地に残っているようです。
最近は生のにんにくのほかにもパウダー状のものがビン詰めで売られ、用途の幅もぐっと広くなっています。生のままであれば炒め物の時にみじん切りにして炒めたり、薄くスライスして肉や魚のソテーに添えたりします。パウダーならガーリックトースト、チャーハンやピラフなどのご飯ものにさっと振りかけて味や風味付けに利用できます。
口の中に広がる刺激的な香味が特徴のガーリックは、もちろんカレーの風味アップにも一役も二役も買っています。
鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根部分を、生のまま乾燥させて粉状にし、ほかのスパイスと混ぜ合わせて使用するのです。
独特の香りの強さがガーリックの良さですが、臭気が強すぎるのが難点。臭いが気になる場合は、使用する量やタイミングを調整するとよいでしょう。また、食後に牛乳を飲むと臭いを消すのに効果的ですよ。
フェンネル
フェンネルは地中海地方が原産のセリ科のハーブ。現在はヨーロッパをはじめ、インドやアメリカで栽培・販売されています。日本でも栽培されており、和名ではウイキョウ(茴香)と呼ばれています。
かなり歴史の古い作物のひとつで、古代ローマやエジプトに栽培の記録が残っているそうです。見た目は稲のもみにも似ていて、種からは甘い香りがし、口に含むと若干苦味を感じます。
フェンネルはスパイスや香辛料として、カレーをはじめとする多くの料理に利用されています。料理によって使用部位が異なり、葉は特に魚料理に使用されることで有名です。「魚のハーブ」なんて呼ばれるほどですから、使用される頻度の高さがうかがえますね。
フェンネルが魚を料理する時に好まれるのは、臭みや脂っぽさを消す効果を持っているから。魚や他の材料と一緒に鍋に入れ、煮こむ・焼くなどして調理します。腹痛や脚気、歯の痛みを和らげる効能や消化を促進させる力もあるため、イギリスではダイエットティーとしてフェンネルの種が入ったお茶を飲んでいるそうです。
その他の料理ですと、中国では五香粉の原料、ヨーロッパではピクルスの風味付け等に使用されます。また種を細かく砕いてクッキー・ビスケットやアップルパイに入れ、香り付けに利用するのも相性抜群でおすすめですよ。
コリアンダー
久しぶりにカレーのスパイスをご紹介しましょう。
今回はコリアンダーです。コリアンダーは高さ80cmほどのセリ科の一年草で、原産地は地中海地方。日本ではコエンドロ、中国パセリなどとも呼ばれるそうです。
コリアンダーには随分昔から歴史があります。サンスクリットの書物や紀元前の医学書にはコリアンダーの効能や料理方法が記されていましたし、ツタンカーメン王の墳墓からも発見されています。古くから人々に利用されていたことが分かりますね。
その後はローマからヨーロッパ全土に広まり、アメリカには初めて持ち込まれたスパイスのひとつとして伝わりました。
スパイスとして使用するのは主に果実の部分で、葉は薬味として利用されています。主に東南アジアから東アジアで利用されています。果実をすりつぶすとレモンなどの柑橘系と、薬草や木のような苦味のある香りが混じったような独特の風味が出ます。香り成分はモノテルペン類のセルミンC10H16、デカナール。これは他にオールスパイスやドクダミにも含まれています。
カレーのスパイスとして利用する場合はやはり芳香づけが目的。独特の甘い風味がカレーをマイルドさを加えます。その他にも肉や卵、豆料理によく使用され、インド料理やタイ料理まで幅広く利用され親しまれています。
シナモン
八つ橋にまぶしてあるニッキの通称で有名なシナモン。甘くそしてぴりっと辛みの効いた独特の風味が特徴です。シナモンといえばドーナツ、りんごやフルーツの焼き菓子などがお馴染みです。しかしこれもれっきとしたスパイスの一つでインド料理にも欠かせません。
原産地はエジプトから中国・ベトナム地方ですが、現在は日本を含め熱帯地方ならどこでも生息しています。厳密にいうとシナモンと呼ばれるのはスリランカ産だけで、近種のシナニッケイをから作られるものをカシア、日本産のものはニッキ(肉桂)と分類しています。その歴史は古く、紀元前4000年頃にはエジプトのミイラ作りに防腐剤として使用されていたということです。また、旧約聖書や古代ギリシャの詩、中国の薬学書、日本では正倉院の書物の中でシナモンについての記述があります。実際に樹木が輸入されて、香辛料に使われ始めたのは江戸時代からですが、最古のスパイスとして長い歴史を持っているのです。
シナモンはクスノキ科の常緑樹の樹皮を乾燥させたもの。まるめてスティック状にしたものと、パウダーにしたものが売られています。カレーで使用する場合は香りづけが目的。固形の場合は油で炒め、パウダー状のものは他のスパイスと調合して使います。入れすぎると苦味が強く出すぎてしまうので、配合量の目安は他のスパイスに対して9~13:1の割合。大体この範囲内で微調整してみてください。
クローブ
クローブは甘く刺激的な香りが特徴で、風味づけにもってこいです。大航海時代にヨーロッパのスパイス貿易の中心として人気を博したといわれています。日本では釘のような形をしていることから丁子を呼ばれ、ビンツケ油やにおい袋に入れて使われていました。現代でもとんかつソースやウスターソースの調味料として使われていて、日本人にとてもなじみ深いスパイスなのです。またクローブは殺菌・消炎の効力に優れているため、胃薬の原料としても使われています。
原産地はインドネシアのモルッカ諸島。玉ねぎや豚肉に刺してポトフやシチュー、ローストポークの調理に使うのが一般的です。消臭力に優れているため、肉料理全般に臭い消しとして効果を発揮するのです。ほかには焼き菓子や紅茶に入れると風味や甘さが引き立ち、美味しさを引き立てます。ただし入れすぎると刺激が強くなりすぎますので少量をさっと使いましょう。
カレー料理で香辛料として利用する場合は、ホールかパウダーで調合します。
パウダーで使用するなら他のスパイスとそのまま調合しますが、ホールのまま使うなら、油で炒めて香りづけをするとよいでしょう。甘いのに刺激があり食欲をそそる風味が加わります。そのまま煮込む場合は煮とかし、形が残るようなら料理が完成してから拾い上げるように。この時お茶の葉を入れるような小袋に入れると取り出しやすいようです。
ジンジャー
日本では「生姜」と呼ばれているジンジャーほど様々な料理でなくてはならないとされているスパイスはないでしょう。ひとくちにジンジャーといっても生のもの、スライスして干したもの、おろしたもの、刻んでパウダー状にしたものなど料理によって様々な形態を使い分けて使用します。カレースパイスとして利用する際にはジンジャーを干したものを粉末状にします。調理の利便性だけではなく干したものは生のものより辛味が強いからです。
ジンジャーは高温多湿の地域に生育する植物です。中国、インド、アラビアなどでは古代から調味料として重宝されてきました。紀元前からは西洋に伝わり、日本でも「古事記」にジンジャーに関する記述があるほどの長い歴史を持っています。語源はサンスクリット語で生姜の形を鹿の枝状の角に見立てて命名されたとか。
魚や肉の生臭さを消したり肉を柔らかくするという効用があり、爽やかな風味を持っています。また飲料水やケーキ、ビスケットなどの香り付けとしても有名で、人型のジンジャービスケットや飲料のジンジャーエールなど嗜好品として親しまれています。
ジンジャーはカレースパイスの中でも爽やかな辛さで味にアクセントを与えてくれますが、酢漬けなどの薬味として付け合せられることもあります。カレーの内と外から風味を与えカレーの味に広がりを持たせているのです。
ナツメグ
四大スパイスと呼ばれるスパイスの存在をご存知ですか?胡椒・シナモン・クローブ・そしてナツメグです。ナツメグといえばハンバーグを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし実はカレーのスパイスにも使われているのです。
ナツメグの産地はモルッカ諸島や東インド諸島で、ニクズク科の常緑樹の果実から作られます。実は杏のような黄色い形状をしていて、熟れると果実に裂け目が入り種皮が現れるのです。その仮種皮を取り除き、殻を割って出てくる黒褐色の種子がナツメグです。この際に取り除かれる仮種皮のことをメースといい、メースもスパイスの一種として使われています。
ナツメグはふわっと広がる甘みと苦味が独特のスパイスです。主に香り付けに使いますが、そのヒミツはa‐ピネンとカンフェンという木の実ならではの芳香成分。どうりであんなに香ばしい香りがするはずです。
ナツメグを使用する際は通常はパウダーにして材料に振り掛けます。挽き肉によく合うので、挽き肉カレーを作るときにオススメです。コツは調理する前にスパイスを少々振り、よくなじませること。調理したときに風味が引き立ちます。多すぎると逆に刺激が強くなるので適量を感覚で覚えましょう。オールスパイスやシナモン、チーズなどとも相性がいいようです。カレーやハンバーグ以外にもロールキャベツ、ソースのスパイスとしても優秀。
ピリッと引き立つ風味が魅力のナツメグですが、実は煮込むことによって甘みを増す性質があります。そのためトマトを使った煮込み料理やクッキーなどの菓子にも利用されているのです。
肉料理にもお菓子にも使えるオールマイティーなスパイス、他にも色々な料理に試したら意外な発見が期待出来そうですね。家庭に一本あれば家族からの評判が上がること請け合いです。
クミン
カレーのスパイスを調合するとき欠かせない主要スパイスのひとつがクミンです。これはエジプト原産のセリ科の一年草で、種子はクミンシードと呼ばれます。私たちが通常クミンと呼ぶのはクミンシードの方で、ほろ苦さと、なんともいえない独特の香りがカレーの風味をキリッと引き立たせてくれます。
クミンはそのままホールで炒めてもいいし、砕いて粉末状にして使う方法もあります。
ホールのまま使う場合は熱した油でクミンをさっと炒めます。しばらくチリチリと炒めたら、焦げないうちに取り出します。こうすることで油に香りが移り、次に材料を炒めたときも香りをつけてくれるのです。
粉末状にして使うときは空炒りしたクミンをすりつぶし、そのままカレーに入れるか他のスパイスと混ぜてオリジナルのスパイスを調合します。ターメリック・コリアンダー・シナモン・ナツメグ・グローブなど、数種類から十数種類のスパイスを好みの配分で混ぜ合わせます。スパイスは色づけ・香り付け・味付けなどそれぞれ効能があるします。
どのくらいの割合で配合するかは野菜か肉かといったカレーの種類やその日の気分によって変えられます。ただこれがなかなか難しい!理想の味を一度で表現するには、経験とカンがものをいいます。スパイスの世界は奥が深いのです。
カレー粉はイギリス生まれ?
カレーの本場はインドなのに?と思われることでしょう。確かに起源はインドになるのですが、カレー粉という概念を作ったのはイギリス人なのです。当時イギリスの植民地であったインドからイギリスにカレー料理が徐々に伝わっていったのですが、インドではその料理ごとにスパイスを複雑に取り混ぜて使っていました。スパイスを使い慣れていないイギリス人はその調合の難しさに困り、最初から調合されたスパイスを作ることになったのです。これがカレー粉。
インドでは日本人が思うよりもっと広い意味でカレーという料理があります。まったく辛くないカレーもあるとか。イギリス発のカレーの味にすっかり慣れてしまった私たちにはちょっと意外に感じるかもしれませんね。
ターメリック(ウコン)
カレーと沢庵の黄色は同じものから出来ている。
というと少し意外な感じがします。言われて見ると同じ系統の黄色ですが、味のイメージがあまりに開いているのであまりピンと来ないというのが正直なところではないでしょうか。
その鮮やかな黄金色はターメリックというスパイスで作られます。ターメリックは日本ではウコンという言い方の方がポピュラーかもしれません。このターメリックの活躍でカレーの色はあの輝く黄金色になり、沢庵は鮮やかな黄色になるのです。白いカレーや緑のカレーもありますが、やはりカレーはあの色でないと何だか違う料理を食べている感覚がします。目でも料理を楽しんでいるとはよく言いますが、あの色の汁物をみると自動的にカレー味を連想してしまうほど頭の中に色と味の結びつきが先入観として植えつけられているのではないでしょうか。
そして、それだけではありません。この黄色にはもう1つ重要な効果があります。ウコンの中の更に黄色の成分をクルクミンと言うのですが、このクルクミンが二日酔い防止やがん抑制、美肌効果などに働くのです。二日酔いにウコンが効くというのは、つまりこのクルクミンが作用して肝臓の働きを助けているわけです。
カレーの黄色は体にも美味しい色だということなのですね。
ナンプラー
タイや東南アジアの料理に欠かせないのがナンプラーです。これは塩気を加えた魚類を発酵・熟成させて作る魚醤と呼ばれる調味料のひとつ。魚醤にはほかにもベトナムのニョクマム、インドネシアではトラシ、日本では秋田のしょっつるなどが有名です。
ナンプラーは独特の強い臭気がありますが、魚から抽出された濃厚な旨みが料理に塩気を与え、ぐっと美味しさをアップさせてくれます。この旨み成分の元はタンパク質が分解されてできたアミノ酸と魚肉に含まれている核酸。ほかにもミネラルやビタミンも豊富に含まれているのです。
東南アジアではほとんどの料理のベースにナンプラーが使われ、食堂や屋台には常備されているほど。トムヤムクン、野菜や肉の炒め物に加えて味付けに使用されるほか、タイ風カレーにも隠し味として愛用されています。
ガジュツ
ガジュツはショウガ科ウコン属の多年草で、英語ではゼドアリーと呼ばれています。また和名では、根や茎、包葉が紫色であるため紫ウコン、初夏に花をつけることから夏ウコンとも呼ばれています。
原産地はインドを中心とする熱帯アジア。東アジアや中国、インドネシアやバングラディシュなどにも広く分布しています。日本では屋久島や種子島、沖縄などが良質のガジュツの生産地として有名です。
ガジュツはシネオールやカンファー、セスキテルペン、クルクメノシンなど、あまり耳にしたことのないような成分を100種類以上含んでおり、日本薬局方に生薬として収録され用いられています。しょうがとよく似た用途として使用されるのが一般的で、風邪や鎮痛、消化不良や吐き気などの症状にあてがわれることが多いです。また最近は、シネオールやアズレンなどガジュツに含まれる成分が脂肪やコレステロールを分解・排泄してくれ、ダイエットに効果的だと女性からも注目を浴びています。
スパイスの形態
スパイスには色々な形態があり、大別すると生のスパイスと乾燥させたスパイスに分けることができます。素材や料理、目的に合わせて使い分けることがスパイス名人への近道です!
・フレッシュ
→洋風のいわゆるハーブと呼ばれるものと、日本で薬味として使われるものがあります。
ハーブはサラダやパスタなど、薬味は魚の刺身や鍋物・佃煮などに利用されます。
・パウダー
→乾燥させたスパイスを細かく砕いて粉末状にしたものです。手軽で使いやすく、肉や魚料理の下味付けやソテー、スープなどどんな料理にも使いやすいのが魅力。調理の仕上げにささっと振りかけたり、食事中に直接使用しても風味をアップさせることができます。
・あらびき
→ホールを使いやすい形の粒状にしたもののことです。機械やミルで挽いたり刻んだりすると香りや風味が増すため、パウダーよりもっとスパイスを効かせたい場合に利用します。肉料理のソテーやロースト、マリネなどに適しています。
・ホール
→スパイスを原型のまま乾燥させたものなので、風味を強く出したい時、香りを本格的につけたい場合に使います。加熱時間が長い煮込み料理などでは、布でできた子袋にスパイスを入れて煮出し、後から取り出して使います。
・ミックススパイス
→カレー粉やガラムマサラ、七味唐辛子など、複数のスパイスを混ぜ合わせたものです。
あらかじめ最適な量をブレンドしてあるので、スパイス初心者の方でも使いやすいところが魅力です。
・シーズニングスパイス
→食塩や砂糖、その他調味料にスパイスをブレンドしたもの。ミックススパイスと同様、味付けに自信がないときや本格的な味や風味を出したい時に使うのがお勧めです。
セサミ
セサミとは日本で言うゴマのこと。日本でも毎日の食卓によく登場し、大変馴染み深いスパイスのひとつですよね。
セサミは東インドやエジプトを原産とするゴマ科の一年草で、現在は中国、エジプト、ブラジルを始め世界各地で栽培されています。セサミは7000年前のくさび形文字にも名前が記されているほど古くから親しまれており、当時は主に油を採ることを目的としていました。現在では食用油のほか、食用として和洋中問わず様々なジャンルの料理に使用されています。
セサミには黒ゴマ、茶ゴマ、白ゴマの3種類があり、色が濃いほど風味が強く、反対に薄くなるほどマイルドな風味がする特徴があります。
特に手をくわえずそのまま調理に使ってもいいですが、煎ることで香りが引き立つため、香ばしさを出したい場合は調理の際フライパンで軽く火を通しましょう。またゴマ油、すりゴマや練りゴマにして利用すればさらに料理の幅が広がります。中国ではゴマ油が風味付けに欠かせない存在ですし、日本人にもゴマ油を使ったドレッシングは大人気です。またパンやケーキ、クッキーや煎餅などの生地に練り込んだり、トッピングに使用したり、菓子類との相性もグー。
またセサミは不老長寿の秘薬と呼ばれるほど栄養価が高いスパイスで、カルシウムやビタミンB1、鉄分、食物繊維がたっぷりふくまれています。またセサミン、セサミノールなどのゴマグナリン物質には活性酸素を撃退する抗酸化作用があり、コレステロールの除去や動脈硬化の予防、ダイエットや美肌効果にも期待できる優れもの。テレビや雑誌でもたびたび特集が組まれるほどの人気ぶりに注目です。
ポマンダー
ポマンダーはオレンジやレモンなどの柑橘系、りんごなどの果物にスパイスをまぶして作る香りを楽しむための丸い玉です。
手作りのポマンダーには幸運を呼ぶという意味が込められているため、欧米ではクリスマスや新年を迎えるとポマンダーをプレゼントとして交換し合う習慣があります。
作り方は簡単。まず好みの丸い果物に十字にテープを巻きます。次に竹串などで果物の表面に穴を開けていきます。この穴の中にクローブを差し込むのですが、この時奥までしっかり指しこんで果汁を吸収させるのがポイントです。
ここまでの作業が終わったらテープをはがし、ポマンダー用に作っておいたスパイスをまぶし、風通しのいいところに吊るして乾燥させて出来上がりです。
プレゼントにするときはリボンをかけるとかわいらしいですし、そのままツリーや部屋の飾りとして使っても楽しいですよ。
パセリ
パセリはセリ科の二年草で、別名をオランダゼリといいます。あざやかな緑色とさわやかな苦みのある香りが特徴のハーブです。原産地は地中海沿岸ですが、環境に適応しやすい性質であるため今では世界各地で栽培されています。
パセリには大きく分けて4つの種類があります。まず1つ目、葉が縮れた日本でおなじみのパセリがパナマウント種のモスカールドパセリ(カーリーパセリとも呼ばれる)です。葉の部分を料理に添えて、彩りを演出するのによく使われますね。2つ目はイタリアンパセリ(フレンチパセリとも呼ばれる)。これは葉がまっすぐで平たく、その分食感もモスカールドパセリと異なります。この他に大きな葉柄の部分を食べるナポリタンパセリ、ニンジンのように根の部分を食べるハンブルグパセリがあります。
パセリは栄養価が高く、ビタミン、ミネラルや鉄分が豊富に含まれていのです。特にビタミンAはにんじんと同等の量で、ビタミンCはレモンの2倍!またパセリ特有の苦味成分であるアピオールには臭みを消す効果があるので、肉や魚の臭み消しや口臭予防によく利用されています。
料理に使われる場合は、やはりキレイな緑色を活かしてサラダやパスタ、ソテーなど様々な料理の飾りに使うことが多いでしょう。もちろん見た目を彩るだけでなく、塩と相性がいいため塩味の料理にもよく利用されます。特にヨーロッパではパセリのみじん切りを塩・こしょうと同じ感覚で日常的に使用しているといいます。また、パセリは味や香りに干渉せず素材や他のスパイスの良さを引き立てる効果があり、料理の最後にみじん切りにしてふりかけたり、ブーケガルニという煮込み料理には欠かせない、頼もしいスパイスなのです。
バニラ
アリスクリームなどでお馴染みのバニラは、ラン科バラ属のつる性植物です。メキシコ、中央アメリカを原産とし、マダガスカルやメキシコなど熱帯地域で広く栽培されています。
収穫や加工に手間がかかるため、現在市場に出ているものはほとんどが人工のもの。天然のバニラには大変高価な値が付けられます。
バニラは摘み取っただけでは香りがしないため、収穫した種子を発酵・乾燥させることでその温かみのある特有の甘い芳香を引き出します。店頭ではバニラエッセンスやバニラオイル、バニラビーンズとして加工され販売されています。
料理には香料として使用されます。アイスクリームをはじめ、ケーキやカスタードクリーム、プリンなどの甘い菓子類が代表的。バニラはチョコレートやココア、コーヒー、ワインといった飲料にも含まれることが多く、わたし達は知らず知らずのうちにバニラの香りを楽しんでいることになりますね。そのくらい広く日常に溶け込んでいる、身近な存在だといえるでしょう。
セージ
セージはシソ科サルビア属の多年草で、地中海沿岸を原産地とします。500種類以上もの変種がありますが、一般に店頭で売られているのはコモンセージという品種です。
現在の主な産地はギリシャ、イタリア、トルコ、ユーゴスラビアなど。ヤクヨウサルビアの別名を持つように、古代ローマ時代から万能薬として人々に重宝されてきました。「長生きしたい者は5月にセージを食べよ」「庭にセージを植えているものは不老不死」などということわざもあるほどです。
利用するのは葉の部分。乾燥させ、表面が白っぽくなったものは品質がいい証なのだそう。渋みとわずかな苦味が感じられ、主な効能に殺菌消毒作用があるため豚肉や鶏肉、鯖など魚の臭み消しにはもってこいです。
また消化促進や精神安定効果も期待でき、食後の胃もたれに効くともいわれています。
料理ではソーセージや挽き肉の詰め物を作る時に、乾燥させた葉の粉末や生の葉をそのまま細かく刻んで加えます。またタイムやローズマリーなど、ほかのハーブと一緒にオリーブオイルに混ぜて野菜やシーフード、オーブン料理の下味に使うとおいしいですよ。
またハーブティーや観賞用としても人気があります。
オールスパイス
中央アメリカ、西インド諸島などの熱帯を原産とするフトモモ科で、また緑色の未熟な果実を天日で乾燥させたものがオールスパイスです。主な産地ではジャマイカが最も有名です。
名前の由来はクローブ・シナモン・ナツメグをミックスしたような香りがすることにあります。さわやかで心地いい芳香に加え、かすかな苦味とピリッとした刺激が感じられる味が特徴です。
オールスパイスをヨーロッパに持ち込んだのはコロンブスですが、紀元2世紀頃にはマヤ・インディオが王の遺体の周りにオールスパイスを防腐剤として敷き詰めて使用していたといいます。
主な効能に殺菌・抗菌、油の酸化防止のほか、消化促進など消化器系の症状を和らげる効果もあります。また精油として薬品の香りづけにも利用されます。
料理ではソーセージやハンバーグ、牛肉のローストなどと相性がよく、トマトの煮込み料理やスープなどに加えても効果的。もちろんほかのスパイスと混ぜ合わせカレー粉にすることもあります。また食品メーカーではケチャップやソースの香りづけに使われる、重要なスパイスとなっています。
タイム
タイムはシソ科の多年草で、原産地は地中海沿岸。主な産地はフランス、スペイン、ポルトガル、ギリシアなど、亜熱帯から温帯にかけて生育しています。
かすかな苦味と清々しい香りのする、心地よさの感じられるハーブです。
ヨーロッパでは昔から「タイムの香りがする」といわれることは最高の褒めことばだったそう。それはタイムが小さくても気品のある香りを漂わせていることから、勇気の象徴、気品や優雅さを表すハーブとして人々に信じられていたからです。そのため当時は戦争に行く兵士がタイムの小枝を身につけたり、女性がタイムの柄の刺繍をほどこしたものを兵士にプレゼントしていたといわれています。
ひとくちにタイムといっても、その品種は多種多様、用途も料理から観賞用まで様々です。
料理に使用されるものでポピュラーなのは、さわやかな芳香が強く、フランスやイギリスで有名なガーデンタイム、また主にスパイスとして使用されるものには、すがすがしい中にほろ苦さと甘味が感じられるコモンタイムなどが挙げられます。
他にもレモンタイム、コンチネンタルワイルドタイム、クリーピングタイムなど、約30種にものぼる種類のタイムがあります。
タイムにはフェノールやチモールといった殺菌・防腐作用のある成分が含まれており、ソーセージやハムなどの加工に適しています。また肉や魚と相性がよく、肉料理や魚料理の他、ホイルの包み焼きやシチュー、トマト煮やマリネなどにもピッタリ。
長時間煮込んでも香りが残るため、だしをとる時に使うブーケガルニやブイヨンの材料には欠かせません。また食用はもちろん、入浴剤やポプリなど香料や観賞用としても人気があり、幅広く愛されているスパイスなのです。
タイム
タイムはシソ科の多年草で、原産地は地中海沿岸。主な産地はフランス、スペイン、ポルトガル、ギリシアなど、亜熱帯から温帯にかけて生育しています。
かすかな苦味と清々しい香りのする、心地よさの感じられるハーブです。
ヨーロッパでは昔から「タイムの香りがする」といわれることは最高の褒めことばだったそう。それはタイムが小さくても気品のある香りを漂わせていることから、勇気の象徴、気品や優雅さを表すハーブとして人々に信じられていたからです。そのため当時は戦争に行く兵士がタイムの小枝を身につけたり、女性がタイムの柄の刺繍をほどこしたものを兵士にプレゼントしていたといわれています。
ひとくちにタイムといっても、その品種は多種多様、用途も料理から観賞用まで様々です。
料理に使用されるものでポピュラーなのは、さわやかな芳香が強く、フランスやイギリスで有名なガーデンタイム、また主にスパイスとして使用されるものには、すがすがしい中にほろ苦さと甘味が感じられるコモンタイムなどが挙げられます。
他にもレモンタイム、コンチネンタルワイルドタイム、クリーピングタイムなど、約30種にものぼる種類のタイムがあります。
タイムにはフェノールやチモールといった殺菌・防腐作用のある成分が含まれており、ソーセージやハムなどの加工に適しています。また肉や魚と相性がよく、肉料理や魚料理の他、ホイルの包み焼きやシチュー、トマト煮やマリネなどにもピッタリ。
長時間煮込んでも香りが残るため、だしをとる時に使うブーケガルニやブイヨンの材料には欠かせません。また食用はもちろん、入浴剤やポプリなど香料や観賞用としても人気があり、幅広く愛されているスパイスなのです。
五香粉
中国でも色々な料理にミックススパイスが使われています。それが中国の伝統ある香辛料、五香粉です。
八角(スターアニス)、花椒(サンショウ)、シナモンまたはカシア、クローブ、フェンネルなどの5つの香辛料を混ぜ合わせたものが一般的ですが、カルダモンやドライジンジャー、ナツメグ、胡椒、甘草のうちからスパイスを選ぶこともあります。ちなみに五香=数種という意味ですので、組み合わせの種類や数はこれだけではありません。
本格的な中国料理には、五香粉が隠し味として重宝されています。豚の角煮や鶏のローストといった肉料理のほか、マリネにも少量入れるだけで中華の味を作り出すことができるのです。材料の下味や肉の臭み消しとしても活躍します。
また五香粉と花椒塩と同量ずつブレンドして作る椒塩五香粉は、鶏のから揚げや天ぷらの衣に使用すると風味がアップしておススメですよ。
アサフェティダ
日本ではちょっと聞いたことのない名前のスパイスだと思います。アサフェティダはインド北部を原産とするセリ科の植物で、イランやアフガニスタン、パキスタンなどにも分布しています。
スパイスとして使用するのは、根茎から採れる樹脂を乾燥させたもの。そのため語源はペルシャ語で「樹脂」という意味の「アザ」、ラテン語で「臭う」という意味の「フェティダ」
からきているのだといいます。
アサフェティダには硫黄のようなとても強い刺激臭があり、生のままでは悪臭に加えて苦味と辛さがあるため調理には使用されません。しかし、熱を加えるとニンニクや玉ねぎのようなほどよい香りが立ち上がるようになります。
ほんの少量を料理に加えるだけで美味しさが増すため、インドや中東の料理には欠かすことのできない存在です。主に野菜や豆の料理、ピクルスやソースの材料に使われます。また宗教の違いによりばらつきがありますが、肉を焼くときに利用されることもあるそうです。
薬理効果として、けいれん、気管支炎、腹部の張りなどに効き目があります。
アサフェティダ
日本ではちょっと聞いたことのない名前のスパイスだと思います。アサフェティダはインド北部を原産とするセリ科の植物で、イランやアフガニスタン、パキスタンなどにも分布しています。
スパイスとして使用するのは、根茎から採れる樹脂を乾燥させたもの。そのため語源はペルシャ語で「樹脂」という意味の「アザ」、ラテン語で「臭う」という意味の「フェティダ」
からきているのだといいます。
アサフェティダには硫黄のようなとても強い刺激臭があり、生のままでは悪臭に加えて苦味と辛さがあるため調理には使用されません。しかし、熱を加えるとニンニクや玉ねぎのようなほどよい香りが立ち上がるようになります。
ほんの少量を料理に加えるだけで美味しさが増すため、インドや中東の料理には欠かすことのできない存在です。主に野菜や豆の料理、ピクルスやソースの材料に使われます。また宗教の違いによりばらつきがありますが、肉を焼くときに利用されることもあるそうです。
薬理効果として、けいれん、気管支炎、腹部の張りなどに効き目があります。
ブーケガルニ
ブーケガルニとはフランス語で「香草の束」という意味を指す、ミックススパイスのひとつです。タイムやパセリ、セロリやローリエなど数種類の生のハーブを束ね、たこ糸で縛って作ります。乾燥させたスパイスを使用する場合は、袋詰めにします。
用途としてスープのストックや煮込み料理の風味付けには欠かせませんし、肉や魚などの臭み消しとしても一役買っています。もちろんカレーに入れてもグーです。
一般的には食用として利用されるブーケガルニですが、もともとハーブは香りの良さを活かしてポプリにしたり、フレッシュな場合は葉っぱの緑を楽しんだりもします。そのためブーケガルニもテーブルに飾ったり、プレゼントとして人に渡したりして楽しむこともあるようです。
ディル
ディルは細くて繊細な葉や茎が特徴のセリ科の植物です。地中海地方を原産とし、主にドイツやイギリスで生産されています。
語源をさかのぼると「穏やか、なだめる」という意味のノルウェー語「dilia」に由来しており、その名の通り幸運をもたらす植物と考えられており、女の呪いから実を守るお守りとして使用されていたというエピソードも残っています。
ディルの葉には爽やかな清涼感があり、種子には舌がピリッとするような辛みがあります。
料理にはピクルスやサラダ、スープに使用されるほか、魚との相性がいいため、マリネや焼き魚にも重宝されています。またパンやクッキーなどの焼き菓子の生地に混ぜ込んでも風味が効いて美味しさがアップするのでお勧めです。
ディルには神経を落ち着けたり消化を助ける鎮静作用があります。そのためお茶にして夜泣きをする赤ちゃんに飲ませたり、心身ともに弱っている入院患者にディルの入った飲み物を出すこともあるそうです。
ポメグラネート
ポメグラネードは日本でザクロと呼ばれる、亜熱帯地方を原産とするザクロ科の落葉樹です。オレンジがかった赤い実が美しく、鑑賞用として昔から人々に愛されてきました。
種類によって酸味が強いものや甘みの強いものがありますが、ほのかに甘酸っぱい外種皮はすりつぶしてチャツネやカレーに酸味料として使用されています。もちろん生食でもいけますし、ジュースの原料や、シュガーシロップにザクロの風味をつけたグレナデンシロップはカクテルに欠かせません。また、種子は中近東やイランでサラダの付け合せやデザートにも用いられています。
ザクロはクエン酸やカリウムなど、ミネラルやビタミンが豊富です。また女性特有のホルモンであるエストロゲンが種子の部分に含まれていて、美容や更年期障害に効果があるといわれています。ただし女性ホルモンにまつわる疾患を患う可能性のある方は、採りすぎると乳ガンや子宮ガン発症につながることもあるため注意しましょう。
ミント
ミントはシソ科ハッカ属の多年草で、名前の由来はギリシャ神話に出てくる妖精ミンテから来ています。原産地は地中海沿岸で、主な産地はアメリカやイギリス、フランスなどです。
ミントにはペパーミント、スペアミント、和種のクールミントの3種類があります。
ペパーミントはスカッとした清涼感があり、葉が丸いという特徴があります。またクールミントはペパーミントと同様メントールの含有量が多く、清涼感のある強い香りが特徴です。これらはチョコレートやフルーツパイ、キャンディなど甘い菓子類と相性がいいほか、歯磨き粉の原料として使用されていることも有名です。
スペアミントはペパーミントほど香りが強くなく、甘い香りがあります。羊や鴨など癖のある肉料理、またトマトやナスなど夏野菜を使った料理に最適です。
ミントは吐き気や消化不良の症状、気管支炎などに効き目があり、医薬品の材料として使用されています。またアロマオイルやハーブティーにして、不眠症や神経症の解消に役立てることもあります。
レモングラス
原産地は熱帯アジアで、現在はアフリカ・南アメリカ・オーストラリアなどでも生産されています。イネ科、オガルカヤ属に属する多年生のハーブで、見た目はススキのように背が高く、ねぎにも似ています。シトラールという成分が含まれており、レモンのような香りや風味があるのが特徴です。生のまま使用してもいいですし、乾燥させてパウダー状になったものがビンに入って売られていたりします。
葉をそのまま利用する場合は、みじん切りにして肉料理にまぶしたり、魚と一緒にアルミに包んでホイル焼きにすると風味づけになります。スープやカレーなどに使用する時はパウダーを他のスパイスや調味料と合わせて入れます。また、レモングラスは主にタイ料理やエスニック料理に欠かせないスパイスです。タイの代表的な料理、トム・ヤム・クンには葉を薄くスライスし、スープを煮出すのに使用したりします。
さっぱりしているため、特に鶏肉や魚、シーフードとの相性がいいのです。
気になる効能ですが、解熱や体を温めて発汗を作用があるため、風邪や頭痛、ストレスを解消したい時などにおススメです。
ワサビ
アブラナ科ワサビ属に属するワサビは日本ならではの香辛料。漢字では山葵と書きます。独特のツンとした香りで世界的にも知名度が高く、特に日本食ブームを経て日本食が定着しつつある欧米では「wasabi」で通じるのだそうです。
ワサビは山間地の冷たい清流で自生、栽培されるほか、田んぼでも作られます。このように水の中で育てるものを水ワサビといい、主要産地は静岡県や長野県、岐阜県や東京都です。また畑で育てるワサビもあり、こちらは畑ワサビといいます。主に山口県や鳥取県、広島などで栽培されています。
使用するのは根の部分で、生のものをのの字を書くようにしてすり下ろすと、香りが高く辛みも強くなります。家庭では市販のチューブ入りの練りわさびが手軽で人気です。
寿司や刺身など生魚にしょう油と一緒に付けて食べるほか、蕎麦やお茶漬けなどの日本料理にも薬味として重宝されています。また欧米でも肉料理のソースにワサビを使用することがありますね。また畑ワサビは酒粕と合わせてわさび漬けにされ、ご飯の副菜としても親しまれているのです。
ワサビにはビタミンCが豊富に含まれるほか、辛みの元であるからし油は食中毒や抗ガン作用、血栓を予防する効果もあるといわれ最近注目を浴びています。魚の臭みを消したり、食欲増進効果も期待できます。またわさびには優れた殺菌・消臭・抗菌効果があるため、食用以外にも消毒液や抗カビ剤として用いられるという、日本を代表する優秀なスパイスなのです。
ジュニパーベリー
ヨーロッパ北部を原産とするヒノキ科の常緑針葉樹の実をジュニパーベリーといいます。直径7mm前後の暗紫色の丸い実で、乾燥させてスパイスにします。甘さと苦味のある香りを持ち、ジンの香りづけには欠かせないスパイスなのです。
ジュニパーベリーはドイツやフランスのキャベツの漬物であるザワークラウト、牛や鹿などの肉料理によく使用されます。またドレッシングやバーベキュースパイスなどのミックススパイス、フルーツの砂糖漬けにも味のアクセントとして使われています。
主な効能に消化促進や利尿作用があるため、むくみや水太りの解消に効果的であることが有名。そのほか、肝臓や腎臓、リウマチにも効き目があるといわれています。
ジュニパーベリー
ヨーロッパ北部を原産とするヒノキ科の常緑針葉樹の実をジュニパーベリーといいます。直径7mm前後の暗紫色の丸い実で、乾燥させてスパイスにします。甘さと苦味のある香りを持ち、ジンの香りづけには欠かせないスパイスなのです。
ジュニパーベリーはドイツやフランスのキャベツの漬物であるザワークラウト、牛や鹿などの肉料理によく使用されます。またドレッシングやバーベキュースパイスなどのミックススパイス、フルーツの砂糖漬けにも味のアクセントとして使われています。
主な効能に消化促進や利尿作用があるため、むくみや水太りの解消に効果的であることが有名。そのほか、肝臓や腎臓、リウマチにも効き目があるといわれています。
スパイス貿易
ヨーロッパやアジア、アラビア地方では何千年も昔から薬用、防腐、料理用としてスパイスが使われていました。当時は大変高価なものとして扱われ、貴族が少量ずつ大切に保管しながら使っていたそうです。様々な効能を持ち人々の生活を潤してくれるスパイスは、商売の中心として各国で取引されるようになっていきました。
紀元前1世紀にはローマ人がスパイスを求めてエジプトからインドへと航海をはじめ、中国ではシルクロードが陸路として用いられるようになり、それから数世紀の間東西交流がさかんに行われるようになりました。その後いったん交流が衰えたものの、11世紀になると十字軍が東西の交流を再開させ、十字軍の食料供給地であったイタリアのベニスとジェノバがその時代の貿易を独占するようになりました。14世紀にはこの両国がスパイスなどの貿易の主導権をめぐって争い、勝利したベニスがその後約100年の間東洋との貿易を独占するようになります。
15世紀の大航海時代になるとコロンブスがアメリカ大陸を発見し、新しいスパイスをヨーロッパに持ち帰りました。またポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマはインド西岸にたどり着き、インドの国王と取引きの約束を交わしたことで、ポルトガルとインド間でスパイス貿易がさかんに行われるようになりました。この頃から自由競争による値がつけられるようになり、スパイスをめぐって覇権争いが繰り広げられるようになっていったのです。その後主導権はポルトガルからオランダ、オランダからイギリスへと移り変わり、18世紀になってようやく事態が収拾しました。
今でこそ私たちも身近に購入できるスパイスですが、かつては一国の隆を左右するほどの価値を持つ存在だったのです。なんだか信じられない話ですが、多くの人々がスパイスをかけて一生懸命生きたのだと思うと、ちょっぴりじんときてしまいますね。
ニゲラ
二ゲラはきんぽうげ科の一年草で、南ヨーロッパや西アジアが原産。ニゲラという名前には「黒い」という意味があり、黒い種ができることからこのように名付けられました。日本ではクロタネソウとも呼ばれています。また八重状の花びらと繊細な葉が見る人にはかない印象を与えるため、英語では「ラブインアミスト(霧の中の恋人)」とも呼ばれているそうです。
ちなみスパイスとして使用するのは種の部分。17世紀のヨーロッパでは飲み物や甘味料
として利用されていました。現在はインドを中心に種をホールのまま煎り、野菜や豆料理の香り付けに使用したり、上からパンやケーキなどに振りかけて風味を加えるのに活躍しています。
また二ゲラは乳の分泌をよくし、授乳を促進する効能があるといわれています。見た目の印象も効能も、特に女性にぴったりのスパイスだといえるのではないでしょうか。
ライムリーフ
ライムリーフ(カフィルライム)は熱帯アジアを原産とするミカン科のスパイスです。タイ語ではバイマックルーといいます。葉は2枚ずつ隣り合わせにつながったようなユニークな形をしているのが特徴。果実はでこぼこした凹凸のある表面をしているため、日本では「コブミカン」の名称で呼ばれています。
料理に利用するのは皮や葉の部分で、葉からは柑橘系特有のレモンにも似たさわやかな香りがします。一方果実の皮はもっと強い芳香と苦味があり、すりおろして料理に添えると風味アップに役立つので試してみてくださいね。
エスニック料理、特にタイ料理で使用されることが多く、鶏肉や魚の料理、カレーのスパイスに用いられます。タイで代表的なトムヤムクンには、レモングラス・パクチーなどと一緒に煮出してスープに辛さと酸味をプラスします。
またタイ料理に限らず、ベトナムやインドネシアなどの東南アジアでもスパイスとして料理に用いられているそうです。
チリパウダー
チリパウダーはアメリカ発祥のミックススパイス。チリペッパーというスパイスがありますが、このスパイスを単純にパウダーにしたものではありません。「チリ」はメキシコで「辛い」という意味で、チリペッパーを含む複数の辛みの強い香辛料を混合してあることからこのように呼ばれているのだそうです。
チリパウダーはチリペッパー(唐辛子)の粉末とオレガノを基本に、クミン、ディル、クローブなどを混合して作られます。名前や赤い見た目の通り、ピリッとした辛さが特徴的です。
主にメキシコ料理で人々に親しまれており、タコスやチリコンカーンには欠かせません。
またピラフやパスタ、チキンの味付けにもピッタリ。
作り方は材料をフライパン等で煎り、粉末にしてからそれぞれのスパイスを調合します。また市販で売られているものにはアメリカタイプと、これより辛味の強いメキシコタイプがあり、自宅でチリパウダーを使って料理する場合はブレンドや種類を工夫し、自分なりの味付けを楽しんでみてください。
サフラン
サフランは地中海沿岸や西アジアを原産とするアヤメ科の多年草です。
現在は主にスペインやトルコ、インドで栽培されており、スパイスの中でも最も高価なことで知られています。日本ではなんと宮城県の塩釜市が有名な生産地なのです!ご存知でしたか?
色付けを目的とするスパイスで、使われる部位は花のめしべ。サフランの色素であるクロシンは水溶性ですから、水に溶かすことで鮮やかな黄色を抽出することが出来るのです。
ほろ苦い独特の香りがするため、旧約聖書では「芳香を放つ香辛料」として紹介されています。長時間陽に当てたり空気に触れたままだとすぐ香りが飛んでしまうため、密閉した容器に入れて冷暗所で保存しましょう。
カレーに関するものではご飯をサフランで着色したサフランライスがポピュラーですね。またヨーロッパではブイヤベースやパエリアの色づけになくてはならない存在です。相性のいい食材は米や魚介類のほかにアーモンド、トマト、柑橘類、スパイスではバジル、コリアンダー、シナモン、ローズマリーなどが挙げられます。
サフランの効能は鎮痛、鎮咳、利尿作用など。日本では整理痛や生理不順など、更年期障害など婦人病の特効薬としても処方されています。
カレーのルーとカレーのライス、両方にスパイスを取り入れて、彩どりと健康効果をアップさせましょう。
マスタード
マスタードは別名セイヨウカラシという、黄色く小さい花をつけるアブラナ科の一年草です。日本ではカラシと呼んでいます。ホワイト、ブラック、ブラウンの3つの種類があり、それぞれヨーロッパや北アメリカ/インド/南ヨーロッパを原産とします。
ホワイトマスタードはあまり辛みがなく、穏やか旨みがするのが特徴です。ピクルスを作るのにスパイスとして使います。
反対にブラックマスタードは刺激が強く、ツンと鼻につくような辛さがあります。一度に口に入れると辛くて涙が流れるほどの威力があり、TVでは罰ゲームで大量のマスタードを入れた食べ物を食べる・・なんて光景が見られることも。
ブラウンマスタードは日本では和がらしとして親しまれており、おでんなどの薬味やからし漬けとして日常よく使われていますね。また南インドでは香り付けとして民族料理に欠かせない存在で、油で炒めてから香ばしさを演出します。
スパイスに利用するのは種子の部分です。ホールのまま使ってもいいですし、さやが熟したら乾燥させ、種を取り出して粉末にしたもの、さらに粉末に水を加えて練り、ペースト状にしたものがチューブに入って店頭で売られています。和風・洋風を選ばず身近に使える所が魅力のスパイスです。
キャラウェー
セリ科の二年草で、原産地は西アジアや北・中央ヨーロッパです。現在の主な産地はオランダ、ドイツ、イギリス、イランやインドなどとなっていますが、そのほとんどは特にオランダで生産されているようです。
別名ヒメウイキョウと呼ばれ、見た目がクミンに似ているのでフランスでは牧場のクミンと呼ばれているそうです。歴史の古いスパイスは色々ありますが、キャラウェーにも様々なエピソードが残されています。紀元前1世紀のローマではアピシウスという美食家として有名な人物が著書の中でキャラウェーを使った調理方法を紹介していたり、エジプトの医学書「エーベルスパピウス」では薬効としての記録が書かれていました。
調理に利用するのは種子の部分。やわらかな甘みとほのかな酸味、そして苦味がキャラウェーの特徴です。
パンやケーキ、クッキーなどの甘い食べ物のほか、ソーセージやキャベツ料理、りんごと相性がいいためアップルパイや焼きりんごによく使われます。またキャラウェイといえばキャラウェイチーズが有名で、ハーブならではの風味の豊かさが人気の秘訣のようです。
薬用としては消化の促進や不良予防を助ける効果があり、かぜ薬や胃腸薬にも原料として
使われます。抗菌作用も期待できるため、油っこい料理の後などに摂取すると効果的です。
フェネグリーク
地中海地方やインド、アフリカなど、雨の少ない温暖な場所で栽培されているマメ科の一年草です。60cmほどの高さに淡黄色の花をつけ、20個ほどの種が入ったさやを実らせます。
原産地は西アジアやギリシアで、古代から料理や薬用として使用されていました。エジプトではお香やミイラを作るのにフェネグリークを利用していたそうで、最も古いとされるものがエジプトの古墳で発見されています。
香りの特徴はカラメルのような甘さとセロリに似た苦味。スパイスとして使用されるのは種子の部分ですが、種はそのままでは苦くて食べられないため、ひと手間加えて軽く煎るといいでしょう。
主にインド料理でよく利用され、カレーパウダーの主原料となっています。またパキスタンやアフガニスタンでは調味料のチャツネにも使われています。この他に、エジプトやエチオピアではパンの中に入れたり、ベルベレという香辛料に欠かせない材料となっています。
フェネグリークはタンパク質が多く、ビタミン・ミネラルも豊富に含まれています。また滋養、健胃、などの薬用効果があるとされ、健康志向の方にはもってこいのスパイスだといえますね!
カシア
カシアはシナモンと近縁のスパイスで、クスノキ科の木の皮を乾燥させて作ります。中国では紀元前2000年以上も前の書物に記録が残されているほど古い歴史のあるスパイスで、聖書にも清めのスパイスとしてその名が登場しています。
原産地はアッサム地方とミャンマーの北部で、今は中国やベトナム、アメリカでも栽培されています。
シナモンよりも甘さと苦味があり、風味が強くなるのが特徴で、塩気のある料理にぴったりです。中華料理に欠かせない五香粉の材料に使われるほか、マトンなどの羊肉料理にも使用されています。また東ヨーロッパや中央ヨーロッパ地方ではフルーツの煮付けやチョコレートなどの甘い菓子類にも利用されているそうです。
サボリー
ミントのようなさわやかさと胡椒のようなピリッとした辛さが特徴のサボリーは、ヨーロッパ南部の料理によく使われるスパイスです。ヨーロッパ東部やイランを原産とするシソ科の一年草で、フランスやユーゴスラビア、アメリカなどで栽培されています。ウィンター種とサマー種があり、どちらかというとサマー種のほうが香りがいいという定評があります。
サボリーは古代ローマの時代から野菜やソースの香りをつけるために使用されてきました。その刺激をそそる香りと、神話に登場するサテュロスという半人半獣が好んだ媚薬だったという説から、ほれ薬としても用いられていたそうです。
セボリーを使った料理というと、豆料理は欠かせません。スープやサラダをはじめ、いんげんやえんどうなどの豆料理には外せないスパイスです。そのため「豆のハーブ」とも呼ばれているんですよ。またソーセージや肉の詰め物にも使用され、セボリーで作ったセボリービネガーでマヨネーズやドレッシングを作るとスパイシーな香りが引き立ち、美味しさがアップします。
気になる効能ですが、消化促進やぜんそくの発作の沈静作用、冷え性などに効くといわれています。冬にぜひ取り入れたいスパイスですね!
スターアニス
スターアニスは星型の八角形をしており、アニスやウイキョウに似たよい香りがするため、全く異なる種類の植物ですがこのように名づけられました。大茴香(ダイウイキョウ)、または八角茴香(ハッカクウイキョウ)とも呼ばれ、中国を代表するスパイスとして中華料理には欠かせません。中国原産のモクレン科の植物で、現在の主な産地は中国とベトナムです。
赤褐色の花をつけ、スパイスになるのは果実の部分。特に五香粉という中国のミックススパイスの主原料であることは有名です。ほかには豚の角煮や鴨のロースト、レバーの臭みけしにも使用されており、こってりした料理だけでなく、杏仁豆腐などのさっぱりしたデザートにもよく合います。
またスターアニスに含まれるシキミ酸は、インフルエンザの治療薬であるタミフルの原料のひとつ。アジアでは咳止めや風邪薬にも使われていますし、健胃や鎮痛などにも効果があり、主に消化器系の薬としてとても優秀なスパイスだといえるでしょう。
キャラウェー
セリ科の二年草で、原産地は西アジアや北・中央ヨーロッパです。現在の主な産地はオランダ、ドイツ、イギリス、イランやインドなどとなっていますが、そのほとんどは特にオランダで生産されているようです。
別名ヒメウイキョウと呼ばれ、見た目がクミンに似ているのでフランスでは牧場のクミンと呼ばれているそうです。歴史の古いスパイスは色々ありますが、キャラウェーにも様々なエピソードが残されています。紀元前1世紀のローマではアピシウスという美食家として有名な人物が著書の中でキャラウェーを使った調理方法を紹介していたり、エジプトの医学書「エーベルスパピウス」では薬効としての記録が書かれていました。
調理に利用するのは種子の部分。やわらかな甘みとほのかな酸味、そして苦味がキャラウェーの特徴です。
パンやケーキ、クッキーなどの甘い食べ物のほか、ソーセージやキャベツ料理、りんごと相性がいいためアップルパイや焼きりんごによく使われます。またキャラウェイといえばキャラウェイチーズが有名で、ハーブならではの風味の豊かさが人気の秘訣のようです。
薬用としては消化の促進や不良予防を助ける効果があり、かぜ薬や胃腸薬にも原料として
使われます。抗菌作用も期待できるため、油っこい料理の後などに摂取すると効果的です。
リカリス
リカリスは日本では甘草と呼ばれています。砂糖の100倍以上の甘みのあるグリチルリチンという成分を含んでおり、その名の通り醤油の味付けや佃煮・漬物を作る際に甘味料として使用されてきました。
マメ科の多年草で種類がたくさんあります。アジアをはじめヨーロッパにも広く分布しており、歴史も古くエジプトやギリシャでは古代から薬用として親しまれていたそう。他の植物との調和に優れ、解毒作用もあるということで、漢方薬の中でももっともよく処方に試用される材料のひとつなのです。なんと中国最古の医薬書にはあらゆる薬の中心である「国老」として記されています。すごいですね!
日本へ伝わったのは奈良時代、かの有名な正倉院にも保存されていたようです。
カレーに使用する時はその独特の甘みとわずかな香りを活かし、香りづけのスパイスとして使用されます。またしょう油の味付けや佃煮、漬物や塩辛を作る際も重宝される存在となっています。
ガラムマサラ
ガラムマサラという名を皆さんよく耳にするのではないでしょうか?クローブやシナモンのようにスパイスの一種だと思われがちですが、実は複数のスパイスを組み合わせて作られるインドの代表的なミックススパイスなのです。
一口にガラムマサラといっても様々で、2~3種類のスパイスを混ぜ合わせて簡単に作れるものから、十数種ものスパイスを配合したものまでその種類や数は無限大。
語源はヒンズー語で「ガラム=辛い・熱い、マサラ=混合スパイス」から来ています。
「辛い」は理解できますが、「熱い」という意味が含まれるのは熱を加えて作られるためです。またインドの家庭ではおふくろの味として料理に使われるので、あたたかいという意味合いが生じたのだろうという説もあります。マサラにはグリーンマサラやチャットマサラなど、ガラムマサラ以外のスパイスも存在します。
ガラムマサラは辛味を味付けるというよりも香りづけがメインです。
主にクローブ・シナモン・ナツメグの3種類がベースとなることが多いようですが、シナモンにカルダモンやメースをブレンドした香りのいいもの、ペッパーとクローブを基本とする辛みの強いものなど料理や好みに合わせて自由にブレンドすることができます。
作り方は、まずスパイスをホールや粒のまま、火の通りにくい順に煎ります。これをすりこぎやミルなどを使って砕いて粉にすれば完成です。
料理に使用する際、香り付けをメインとするなら煮込み料理などで火を止める直前に加えるといいでしょう。また下味や調理中に使うこともあるので、使用する目的や料理に合わせてうまく取り入れるとぐっと風味がアップします。いずれにしろ多すぎず少なすぎず、適量を加えるのがそのスパイスの良さと料理の美味しさを引き立てるコツです。カレー好きの方はぜひ探究してみてくださいね。
ガジュツ
ガジュツはショウガ科ウコン属の多年草で、英語ではゼドアリーと呼ばれています。また和名では、根や茎、包葉が紫色であるため紫ウコン、初夏に花をつけることから夏ウコンとも呼ばれています。
原産地はインドを中心とする熱帯アジア。東アジアや中国、インドネシアやバングラディシュなどにも広く分布しています。日本では屋久島や種子島、沖縄などが良質のガジュツの生産地として有名です。
シネオールやカンファー、セスキテルペン、クルクメノシンなど、あまり耳にしたことのないような成分を100種類以上含んでおり、日本薬局方に生薬として収録され用いられています。しょうがとよく似た用途として使用されるのが一般的で、風邪や鎮痛、消化不良や吐き気などの症状にあてがわれることが多いです。また、シネオールやアズレンなどガジュツに含まれる成分が脂肪やコレステロールを分解・排泄してくれ、ダイエットにも効果的です。
スパイスの保存方法
スパイスはなんといっても香りと色が命。料理に微妙な色あいや風味をプラスしてくれる頼れる存在です。しかし本来は光・熱・湿気に弱くデリケートですので、保存方法を工夫してスパイスをこれらから守らなければなりません。
生のもの、乾燥させてあるものそれぞれに適した保存方法を知っておくと、スパイスを長持ちさせることができます。
生のもの(フレッシュスパイス)は野菜や果物と同じようにあまり保存がきかないため、使う量だけ購入するようにします。使いきれなかった場合はできるだけその日のうちに冷凍してしまいましょう。細かく刻んで水気を切り、冷凍用パックなどに密閉して冷凍庫へ入れておくと、次に調理する時大変便利です。
またオイルやビネガーに漬けるのもお勧めです。ビンや密閉容器によく水気を切った材料をいれ、オイルやビネガーを足し、2週間ほどおいて使う前にこしましょう。香りが液体に移るまで多少時間がかかるため、芳香の強いスパイスを使用するとうまくいきます。マリネやドレッシングに使うと風味がアップしてとても美味しいので試してみてください。
乾燥したスパイスの保存方法で注意したいことは、まずビンに入っている場合は蓋をしっかり閉めること。スパイスの香り成分は揮発性のものがほとんどのため、湿気が入らないよう密閉した場所に保つことが大切なのです。そして戸棚の中や日の当たらない冷暗所に保管し、高温を避けるようにしましょう。
またいつも料理の際に、ビンや容器のスパイスを使う場合は直接振り出し口から振りかけずスプーンですくう、ビンを火のそばに置きっぱなしにしないようにするなど、スパイスの風味を新鮮に保てるようちょっとした心がけをしておくといいですね。
チャービル
チャービルはヨーロッパ東部を原産とするセリ科の一年草。現在は主にフランスやアメリカで栽培されています。水栽培で簡単に育てることが出来るので、家庭で栽培している人も多くいるようです。
フランスではセルフィーユという別名を持ち、美食家のパセリと呼ばれています。
誠実・正直という花言葉の通り、上品な香りが特徴で苦味や辛みはありません。
ヨーロッパ地方やアメリカではキリストの復活を記念する日にチャービルを食べる習慣があるそうで、希望のハーブとも呼ばれています。
チャービルの効用は発汗作用を高めること。ビタミンC,カロチンなども多く含み、高血圧、風邪を引いてしまった時など料理に使うと効果的です。
サラダの飾りに利用したり、肉や魚のソテーにはみじん切りにして加えたりします。
乾燥させて使うこともフレッシュな状態のまま使うこともできますが、生のものは加熱すると香りが飛んでしまうデリケートな一面を持っています。火を通す場合は仕上がりの直前に加えるなど、特性を上手に利用して料理できるといいですね。ドレッシングや冷たいパスタなどもおススメです。
またフランス料理の調味料として頻繁に使用されるミックスハーブ・フィーヌゼルブには欠かせない定番のハーブとなっています。
スパイスを使うタイミング
スパイスを上手に料理に取り入れるには使用するタイミングがとても重要になります。
スパイスを使用する目的と素材との相性によって、その料理の美味しさを引き出すのに一番適したタイミングがある程度決まっているのです。
例えば素材に味をつける時を考えると、下味をつける場合と調理中に味付けする場合があります。下ごしらえとしてスパイスを使用する場合は、スパイスを素材に漬け込んだりまぶしたりし、しっかりと味が染み込むようにします。調理中に加える場合は煮込んでいる途中のソースやスープに混ぜたり、材料を炒めている最中に上からぱらぱらと振りかけ、全体にスパイスをよくなじませます。料理の色づけが目的の場合も同様です。
また、肉や魚特有の臭みを消したい場合は下ごしらえかこのタイミングで使用するのが一般的となっています。
またスパイスの香りを発生させるもとである精油の成分は長時間煮込んだり高温で焼くなど加熱によって風味が損なわれてしまう恐れがあります。そのため料理に香りをつけたいとう時は、料理が出来上がる直前に加えてさっと取り出すのが上手な使い方です。
ちなみに各スパイスと相性のいい素材や料理を調理の順番に合わせた例です。
・オールスパイス
下ごしらえの段階ではひき肉料理やフルーツケーキなどの菓子
調理中はビーフシチューやアップルパイ
仕上げの際はケチャップや魚のマリネ
カルダモン
カルダモンはキリストが誕生するずっと昔から重宝され、紀元前2世紀ごろにインドからヨーロッパに輸出されていたといわれる、世界で最も古いスパイスのひとつです。
原産地はインドやスリランカ、マレー諸島で、現在はベトナムやタンザニア、グアテマラでも栽培されています。
カルダモンはサフラン、バニラに次いで3番目に高価なスパイスで、香水の原料として使用されていたこともあります。通称「スパイスの女王」という呼ばれ方をされることもあるほど!
カルダモンの種類には緑色のグリーンカルダモン、グリーンカルダモンを漂白したホワイトカルダモン、茶色のブラウンカルダモンがあります。スパイスとして使うのはさやの中に入っているゴマ粒大の種子の部分。香りはしょうのうに似ており、口に含むとジンジャーのような清涼感が残ります。
主な効能に消化促進・健胃作用があるので、日本では小豆蒄という名の生薬として日本薬局方に収録されています。インドでは体力増進に効くスパイスとして認識されているようです。消臭効果もあるため、口臭や肉料理の臭い消しにも用いられます。
カルダモンを使った代表的な料理はやはりインドカレーです。ガラムマサラやカレーパウダーの原料として欠かせない存在となっています。辛い料理だけでなく、アイスクリームやケーキ、チャイなどの甘い物、パンなどにもよく合います。また中近東ではコーヒーにカルダモンを入れて客をもてなす風習があるそうです。
アジョワン
アジョワンは原産地のインドで古くから使用されていたスパイスで、現在ではエジプト、イラン、アフガニスタンなどの中東・南西アジアでも生産されています。
セリ科の一年草で、主に精油を作るのに利用されるほか、主成分であるチモールには殺菌・防腐効果があるため料理の口直しや歯磨きに使われています。また下痢や消化不良にも効果があるので、現地では各家庭で薬用としても重宝されているそうです。
スパイスとして使用する場合は、種子の部分を乾燥させてホールのまま、または砕いて使います。香りはタイムに似ていますが、風味はもっと刺激的。特にパウダー状にするととても芳ばしい香りがするため、料理にほどよく加えるとタイムと同じような風味を出すことができると代用されることもよくあります。
カレーにはまるごとホールのまま入れるか、他のスパイスと混ぜ、ガラムマサラにして加えたりします。他にも魚を使った料理やパサラというインドのパン、ピクルスなどにも使われ、インド料理で広く親しまれています。
ローリエ
ローリエは地中海沿岸を原産とするクスノキ科の常緑種で、英語ではベイリーフとも呼ばれています。日本では月桂樹の葉を乾燥させた香辛料のことを指し、勝負事をして勝った方に葉のついた枝を月桂冠として頭に載せる行為は有名ですね。
すがすがしい香りと優しい甘さが特徴のスパイスで、ヨーロッパ料理には欠かせません。トマトを使った煮込み料理やポトフによく利用されます。また肉の臭みを消す働きがあるため、よくカレーやスープに利用されます。
風味が強いため1~2枚の葉を加えるだけでじゅうぶんです。この時、葉を折って入れるといっそう香りが広がります。
注意点として、長時間煮込むと苦味が出るため途中で取り出すのを忘れないようにしましょう。一般的には乾燥させて苦味や青臭さを取り除くのですが、生のまま使用することも出来ます。
ちなみに家庭でローリエを乾燥させる場合は、重しを乗せて葉がそり返らないようにし、約1週間~2週間日陰で干して水分を飛ばし完成となります。