アニス
スパイスは様々な用途、効能がありますが、今回紹介するアニスもそんなスパイスのひとつです。
原産地は地中海東部の地域やエジプト。セリ科の一年草で、茎の部分はセロリと食感が似ているため、野菜として食用にもされています。スパイスに使用するのは鼻をつくような芳しい香りがする種子の部分。甘草に似た香りがするのが特徴です。
アニスをカレーに入れるとカレーのしつこさがなくなり、さっぱりとした甘みが加わります。しかし入れ過ぎると甘みが強くなってしまうので注意が必要。
このような香りの特性を活かし、アニスはケーキやドーナツの菓子作りには欠かせない存在となっています。また口の臭いを消す消化剤として使用されている他、古代エジプトでは王様の死体をミイラにするための防腐剤として使われていたというエピソードも残っているのですから驚きです。
元々アニスは古代ギリシア時代には薬草として人々に扱われていました。母乳の分泌を促進する、てんかんを予防する、くしゃみがとまるなど、アニスにまつわる効能には様々な説があったようです。それだけ刺激的で強い香りを持つ、インパクトのあるスパイスだったのですね。
ガーリック
ガーリックといえば日本でもおなじみの薬味、にんにくのことです。原産地は中央アジア、日本では青森県が主な生産地で、現在は国内シェアの約70%を占めています。
ガーリックは紀元前からエジプトやインド、ローマ、中国などで使用されていました。戦乱の絶えなかった時代、滋養強壮効果のあるガーリックはスタミナ源として将軍や兵士たちに重宝されたというエピソードが世界各地に残っているようです。
最近は生のにんにくのほかにもパウダー状のものがビン詰めで売られ、用途の幅もぐっと広くなっています。生のままであれば炒め物の時にみじん切りにして炒めたり、薄くスライスして肉や魚のソテーに添えたりします。パウダーならガーリックトースト、チャーハンやピラフなどのご飯ものにさっと振りかけて味や風味付けに利用できます。
口の中に広がる刺激的な香味が特徴のガーリックは、もちろんカレーの風味アップにも一役も二役も買っています。
鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根部分を、生のまま乾燥させて粉状にし、ほかのスパイスと混ぜ合わせて使用するのです。
独特の香りの強さがガーリックの良さですが、臭気が強すぎるのが難点。臭いが気になる場合は、使用する量やタイミングを調整するとよいでしょう。また、食後に牛乳を飲むと臭いを消すのに効果的ですよ。
フェンネル
フェンネルは地中海地方が原産のセリ科のハーブ。現在はヨーロッパをはじめ、インドやアメリカで栽培・販売されています。日本でも栽培されており、和名ではウイキョウ(茴香)と呼ばれています。
かなり歴史の古い作物のひとつで、古代ローマやエジプトに栽培の記録が残っているそうです。見た目は稲のもみにも似ていて、種からは甘い香りがし、口に含むと若干苦味を感じます。
フェンネルはスパイスや香辛料として、カレーをはじめとする多くの料理に利用されています。料理によって使用部位が異なり、葉は特に魚料理に使用されることで有名です。「魚のハーブ」なんて呼ばれるほどですから、使用される頻度の高さがうかがえますね。
フェンネルが魚を料理する時に好まれるのは、臭みや脂っぽさを消す効果を持っているから。魚や他の材料と一緒に鍋に入れ、煮こむ・焼くなどして調理します。腹痛や脚気、歯の痛みを和らげる効能や消化を促進させる力もあるため、イギリスではダイエットティーとしてフェンネルの種が入ったお茶を飲んでいるそうです。
その他の料理ですと、中国では五香粉の原料、ヨーロッパではピクルスの風味付け等に使用されます。また種を細かく砕いてクッキー・ビスケットやアップルパイに入れ、香り付けに利用するのも相性抜群でおすすめですよ。
コリアンダー
久しぶりにカレーのスパイスをご紹介しましょう。
今回はコリアンダーです。コリアンダーは高さ80cmほどのセリ科の一年草で、原産地は地中海地方。日本ではコエンドロ、中国パセリなどとも呼ばれるそうです。
コリアンダーには随分昔から歴史があります。サンスクリットの書物や紀元前の医学書にはコリアンダーの効能や料理方法が記されていましたし、ツタンカーメン王の墳墓からも発見されています。古くから人々に利用されていたことが分かりますね。
その後はローマからヨーロッパ全土に広まり、アメリカには初めて持ち込まれたスパイスのひとつとして伝わりました。
スパイスとして使用するのは主に果実の部分で、葉は薬味として利用されています。主に東南アジアから東アジアで利用されています。果実をすりつぶすとレモンなどの柑橘系と、薬草や木のような苦味のある香りが混じったような独特の風味が出ます。香り成分はモノテルペン類のセルミンC10H16、デカナール。これは他にオールスパイスやドクダミにも含まれています。
カレーのスパイスとして利用する場合はやはり芳香づけが目的。独特の甘い風味がカレーをマイルドさを加えます。その他にも肉や卵、豆料理によく使用され、インド料理やタイ料理まで幅広く利用され親しまれています。
シナモン
八つ橋にまぶしてあるニッキの通称で有名なシナモン。甘くそしてぴりっと辛みの効いた独特の風味が特徴です。シナモンといえばドーナツ、りんごやフルーツの焼き菓子などがお馴染みです。しかしこれもれっきとしたスパイスの一つでインド料理にも欠かせません。
原産地はエジプトから中国・ベトナム地方ですが、現在は日本を含め熱帯地方ならどこでも生息しています。厳密にいうとシナモンと呼ばれるのはスリランカ産だけで、近種のシナニッケイをから作られるものをカシア、日本産のものはニッキ(肉桂)と分類しています。その歴史は古く、紀元前4000年頃にはエジプトのミイラ作りに防腐剤として使用されていたということです。また、旧約聖書や古代ギリシャの詩、中国の薬学書、日本では正倉院の書物の中でシナモンについての記述があります。実際に樹木が輸入されて、香辛料に使われ始めたのは江戸時代からですが、最古のスパイスとして長い歴史を持っているのです。
シナモンはクスノキ科の常緑樹の樹皮を乾燥させたもの。まるめてスティック状にしたものと、パウダーにしたものが売られています。カレーで使用する場合は香りづけが目的。固形の場合は油で炒め、パウダー状のものは他のスパイスと調合して使います。入れすぎると苦味が強く出すぎてしまうので、配合量の目安は他のスパイスに対して9~13:1の割合。大体この範囲内で微調整してみてください。