スパイスを使うタイミング

スパイスを上手に料理に取り入れるには使用するタイミングがとても重要になります。
スパイスを使用する目的と素材との相性によって、その料理の美味しさを引き出すのに一番適したタイミングがある程度決まっているのです。

例えば素材に味をつける時を考えると、下味をつける場合と調理中に味付けする場合があります。下ごしらえとしてスパイスを使用する場合は、スパイスを素材に漬け込んだりまぶしたりし、しっかりと味が染み込むようにします。調理中に加える場合は煮込んでいる途中のソースやスープに混ぜたり、材料を炒めている最中に上からぱらぱらと振りかけ、全体にスパイスをよくなじませます。料理の色づけが目的の場合も同様です。
また、肉や魚特有の臭みを消したい場合は下ごしらえかこのタイミングで使用するのが一般的となっています。
またスパイスの香りを発生させるもとである精油の成分は長時間煮込んだり高温で焼くなど加熱によって風味が損なわれてしまう恐れがあります。そのため料理に香りをつけたいとう時は、料理が出来上がる直前に加えてさっと取り出すのが上手な使い方です。

ちなみに各スパイスと相性のいい素材や料理を調理の順番に合わせた例です。

・オールスパイス
下ごしらえの段階ではひき肉料理やフルーツケーキなどの菓子
調理中はビーフシチューやアップルパイ
仕上げの際はケチャップや魚のマリネ

カルダモン

カルダモンはキリストが誕生するずっと昔から重宝され、紀元前2世紀ごろにインドからヨーロッパに輸出されていたといわれる、世界で最も古いスパイスのひとつです。
原産地はインドやスリランカ、マレー諸島で、現在はベトナムやタンザニア、グアテマラでも栽培されています。
カルダモンはサフラン、バニラに次いで3番目に高価なスパイスで、香水の原料として使用されていたこともあります。通称「スパイスの女王」という呼ばれ方をされることもあるほど!

カルダモンの種類には緑色のグリーンカルダモン、グリーンカルダモンを漂白したホワイトカルダモン、茶色のブラウンカルダモンがあります。スパイスとして使うのはさやの中に入っているゴマ粒大の種子の部分。香りはしょうのうに似ており、口に含むとジンジャーのような清涼感が残ります。

主な効能に消化促進・健胃作用があるので、日本では小豆蒄という名の生薬として日本薬局方に収録されています。インドでは体力増進に効くスパイスとして認識されているようです。消臭効果もあるため、口臭や肉料理の臭い消しにも用いられます。

カルダモンを使った代表的な料理はやはりインドカレーです。ガラムマサラやカレーパウダーの原料として欠かせない存在となっています。辛い料理だけでなく、アイスクリームやケーキ、チャイなどの甘い物、パンなどにもよく合います。また中近東ではコーヒーにカルダモンを入れて客をもてなす風習があるそうです。

アジョワン

アジョワンは原産地のインドで古くから使用されていたスパイスで、現在ではエジプト、イラン、アフガニスタンなどの中東・南西アジアでも生産されています。

セリ科の一年草で、主に精油を作るのに利用されるほか、主成分であるチモールには殺菌・防腐効果があるため料理の口直しや歯磨きに使われています。また下痢や消化不良にも効果があるので、現地では各家庭で薬用としても重宝されているそうです。

スパイスとして使用する場合は、種子の部分を乾燥させてホールのまま、または砕いて使います。香りはタイムに似ていますが、風味はもっと刺激的。特にパウダー状にするととても芳ばしい香りがするため、料理にほどよく加えるとタイムと同じような風味を出すことができると代用されることもよくあります。
カレーにはまるごとホールのまま入れるか、他のスパイスと混ぜ、ガラムマサラにして加えたりします。他にも魚を使った料理やパサラというインドのパン、ピクルスなどにも使われ、インド料理で広く親しまれています。

ローリエ

ローリエは地中海沿岸を原産とするクスノキ科の常緑種で、英語ではベイリーフとも呼ばれています。日本では月桂樹の葉を乾燥させた香辛料のことを指し、勝負事をして勝った方に葉のついた枝を月桂冠として頭に載せる行為は有名ですね。

すがすがしい香りと優しい甘さが特徴のスパイスで、ヨーロッパ料理には欠かせません。トマトを使った煮込み料理やポトフによく利用されます。また肉の臭みを消す働きがあるため、よくカレーやスープに利用されます。
風味が強いため1~2枚の葉を加えるだけでじゅうぶんです。この時、葉を折って入れるといっそう香りが広がります。

注意点として、長時間煮込むと苦味が出るため途中で取り出すのを忘れないようにしましょう。一般的には乾燥させて苦味や青臭さを取り除くのですが、生のまま使用することも出来ます。
ちなみに家庭でローリエを乾燥させる場合は、重しを乗せて葉がそり返らないようにし、約1週間~2週間日陰で干して水分を飛ばし完成となります。