空の上でカレー
日本からインドへの航空路線は、いずれもエア・インディアの運行になります。そしてこの飛行機の機内食としてカレーがメニューに加えられているのです。
チキン、シュリンプ、マトンのほかベジタリアン用のカレーも用意され、このカレーをライスやチャパティなどで味わいます。いずれも本格派の味で評判は上々。作っているのは日本のコックなのですが、レシピはボンベイの本社にて作られています。詳細にスパイスの調合などが指示され、3ヶ月ごとに見直されるというこだわりが味にも反映された逸品です。
他にはタイ国際航空やビーマン・バングラデシュ航空などでカレーがメニューとして出されているようです。タイ国際航空も本格派の味を追求しているようで、機内で十分にタイ料理を満喫した気分になるとか。
対して、日本ではどうでしょうか。日本航空では機内食としてカレーをメニューに加えています。これはカレーが大好きな日本人へのはからいで、これもなかなか好評なよう。海外便ではニューヨーク線、パリ線、フランクフルト線などでカレーが選択できますがエコノミークラスではカレーライスは食べられません。
空の上で食べるカレーは、地上で食べるカレーと違ってそれだけで特別に思えますね。
カレー粉偽造事件
昭和6年、C&Bのカレー粉が偽造されるという事件が起こりました。C&Bのカレー粉をベースにしてそれに唐辛子や陳皮を混ぜてコストの安いカレー粉を製造、それを更にC&Bの空き缶に詰めて売り出したのです。当時は使用されていたカレー粉はほとんどが輸入品、しかも一流店であれば必ずC&Bと相場が決まっていました。この偽造犯らはそこに目をつけ、本家C&Bの半値近くの安い値段をつけて売りさばいたのです。
そんな事がいつまでも続くわけがなく、イギリス大使館から抗議が起こり刑事事件となってしまいました。60名近くのものが新聞紙上に掲載されトップニュース扱いで大々的に報じられたのです。更に、事件の余波で全国の問屋や小売店に在庫していたC&Bカレー粉が真偽の調査のために出荷ストップする事態へと発展してしまったのです。
これだけの大事件となってしまったカレー粉偽造事件。しかし、国産のカレー粉がこの事件をきっかけにして注目されるようになりました。日本でつくるカレー粉も味の面でひけを取らないと認められ始めたためでしょうか。カレー店などでも国産カレー粉の使用頻度が高まり、国産の生産量が増していきます。皮肉なこととなりましたが、この偽造事件は国内カレー粉の普及に一役買ったという結果になったということでしょうか…。
ベトナムのカレー
ベトナムカレーはサツマイモやココナッツミルクが入った、甘くてまろやかな味が特徴です。とろみはなく、スープのようにさらっとしています。辛さは控えめですが、日本と同様ライスにかけたりパンと一緒に食べるのが一般的です。
作り方は、まず肉や野菜にカレー粉をまぶし味をなじませておきます。しばらく置いたらこれを鍋かフライパンにあけ、ガーリックやレモングラス、シナモンなどのスパイスと一緒に炒め、ココナッツミルクを入れて煮込みます。日本では最後にカレールウを入れて煮込みますから、手順の違いがおもしろいですね。
またベトナムの市場では様々なカレー粉やカレーペストが売られており、自分たちでオリジナルのスパイスを調合している家庭も多くあるそうです。残念ながら日本でベトナムのカレー粉を入手するのは難しいので、自宅で作ってみたいときは、チリパウダーやターメリック、コリアンダー、シナモン、クローブなどベトナムのカレー粉に使用されているスパイスを参考にしてみるといいでしょう。
コルマ
コルマとはパキスタンやアフガニスタンで食べられているカレーのこと。ダリ語(ペルシャ語)でカレー、ウルドゥー語でリッチな、という意味を持っています。鶏肉を使ったチキンコルマが主流ですが、羊肉を使ったマトンコルマ、チーズや野菜を使ったコルマなどもあります。
コルマの特徴にはじっくり炒めてとろみを出した玉ねぎを入れること、そしてカシューナッツや生クリーム、ココナッツミルク、ヨーグルトなどの乳製品を加えること、など様々な見方があるようですが、これらに共通しているのは甘味のあるマイルドな仕上がり、ということでしょうか。辛味が少なく独特の味わいがするため、癖になってしまう人もいるそうです。
お店で食べる場合は、店員さんにお願いすれば辛さを足してもらえることもあります。また食べ方は日本やインドと同様で、ライスやナンと一緒に食べるのが一般的です。
イタリア風カレー
イタリアといえばトマトを使った料理が有名ですね。実はカレーもトマトソースやトマトスープがベースになっているんです。
イタリアには元々スープ料理の文化があり、唐辛子などの香辛料を使った辛口の料理も昔から人々に親しまれてきました。特に有名なのは、私たちもパスタなどでおなじみのアラビアータ。これは唐辛子を利かせたトマトソースのことで、トマト、ナス、ズッキーニなどの野菜、魚介類といった食材を使って様々な料理が作られています。その激辛ぶりがまるで怒っているようだということから、イタリア語で「怒り」という意味のアラビアータという名前がつけられたのだそうです。
このアラビアータとカレー粉、そのほかのスパイスやハーブをブレンドしてトマトやベーコンなどの具材を煮込んだものがイタリア風のカレーです。また魚介類をトマトベースで煮込んだスープ、ズッパ・ディ・ペッシェに唐辛子やスパイスを加えて煮込んだカレー風の料理も、イタリア人の間では広く親しまれています。