スパイス貿易

ヨーロッパやアジア、アラビア地方では何千年も昔から薬用、防腐、料理用としてスパイスが使われていました。当時は大変高価なものとして扱われ、貴族が少量ずつ大切に保管しながら使っていたそうです。様々な効能を持ち人々の生活を潤してくれるスパイスは、商売の中心として各国で取引されるようになっていきました。

紀元前1世紀にはローマ人がスパイスを求めてエジプトからインドへと航海をはじめ、中国ではシルクロードが陸路として用いられるようになり、それから数世紀の間東西交流がさかんに行われるようになりました。その後いったん交流が衰えたものの、11世紀になると十字軍が東西の交流を再開させ、十字軍の食料供給地であったイタリアのベニスとジェノバがその時代の貿易を独占するようになりました。14世紀にはこの両国がスパイスなどの貿易の主導権をめぐって争い、勝利したベニスがその後約100年の間東洋との貿易を独占するようになります。

15世紀の大航海時代になるとコロンブスがアメリカ大陸を発見し、新しいスパイスをヨーロッパに持ち帰りました。またポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマはインド西岸にたどり着き、インドの国王と取引きの約束を交わしたことで、ポルトガルとインド間でスパイス貿易がさかんに行われるようになりました。この頃から自由競争による値がつけられるようになり、スパイスをめぐって覇権争いが繰り広げられるようになっていったのです。その後主導権はポルトガルからオランダ、オランダからイギリスへと移り変わり、18世紀になってようやく事態が収拾しました。

今でこそ私たちも身近に購入できるスパイスですが、かつては一国の隆を左右するほどの価値を持つ存在だったのです。なんだか信じられない話ですが、多くの人々がスパイスをかけて一生懸命生きたのだと思うと、ちょっぴりじんときてしまいますね。

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